2003/02/15

クローン羊のドリーは短命でした。病気というのが意外ですが、抵抗力が落ちていたのなら納得出来ます。

NHK特別ドラマのさわりを10分ほど見ました。

とある国の、とある白人の一団が、天然痘によって黒人(主に種痘をしていない子供)の撲滅を謀る、というストーリーらしいのですけれど、差別というものの本質を理解しているのかどうか不安にさせられる導入部でした。 政治学や歴史学等から見た差別とは“経済的な利益を目的とした、特定の人間集団の物理的・心理的囲い込み”というものだと私は理解しています。イデオロギーも、貧富の差も、隔離も全てこの目的に沿っているのです。アメリカの黒人奴隷然り、ナチスドイツのユダヤ人政策然り、近代の女性像然り、部落問題然り、アパルトヘイト然り、黄禍論然り。さっくりネオマルクス主義的に極論すると、威力による対価の支払いを必要としない人間の創造、つまり人間のスケープゴート化・商品化・資源化・家畜化のプロセスを「差別」というのです。

さて、このドラマに戻りましょう。

黒人を絶滅させる陰謀の実行は利益が出る行為か、というとそんなことはなさそうです。ドラマの黒人層は明らかに安価な労働力を提供して白人層の生活を支えています。そんな観点から見ると、黒人子供層の全滅は新規低賃金労働者の激減と黒人層の高齢化をもたらし、明らかに将来の社会的・経済的破綻を惹起するわけで、確実に白人層主導による国家の崩壊をも意味するのです。

己が未来の破滅を予期しつつ、それでも大量虐殺をやるでしょうか? 陰謀を主導した人々は自分自身で3K仕事をするつもりだったのでしょうか? 観念だけで差別する集団は、これをカルトとしか言いようがありません。

はっきり言いましょう。このドラマの設定と展開は“身喰いの蛇”だわ。