寒いので、部屋に籠もって調べものをしていました。いつもながら記憶違いが多くて冷や汗ものです。
そういえば、SFセミナー会場への道のりで古びた煉瓦の壁があったのですが、ふと違和感がありました。何か足りないな、と。少し歩くとその理由は簡単に解りました。
そうだ、弾痕がないんだ。
普段、私が見るのはコンクリートやタイルの壁です。煉瓦の壁は滅多にお目にかかりません。ベトナムへの旅行で、私はようやくそれを目にしました。激戦地だったフエ王宮の古い壁には赤黒く焼き締めた煉瓦が並び、銃弾によって穿たれ、崩れかけていました。その戦争の名残が無いのです。何も残さないこと。それが平和の証拠。そういうことなんじゃないかと、ふと感じた出来事でした。