2007/06/09

該当者不明の年金納付記録5000万件の突き合わせ作業に新プログラムを作成するということですが、IT業界関連としては、「1年以内に全件の調査を完了させる」なんて、相当の力業と思えます。

年金データの他に、おそらく文書情報からの入力も相当含まれると思われる照合用のデータの用意が最難関なんじゃないかな、と。普通にデータベースに入っている分についてはいいのでしょうが、書類から入力する分は人間次第でデータ精度が変わるので、データ入力画面を工夫するわけですが、それだけで多分数ヶ月の設計とシステム構築が必要でしょう。

もちろん、肝心の照会プログラムも数ヶ月でまともな設計ができるかという問題もあります。それができるだけの腕のいい技術者、特に大規模データベースを扱える技術者は数が少ないためにすぐ見つかる保証もありません。そうした場合、民間や郵貯あたりの大規模プロジェクトから無理繰り引っ張ってくるか、あるいは質の落ちる技術者の数でなんとかするか、インド・中国あたりの海外から連れてくるかということになると思います。3番目については、自国の年金不備解消システムを外国人SEが作るとなると、ちょっと外聞が悪いし恥ずかしいことではありますが、質が確保できるのならばこの選択肢は大いに考慮していいと思う。ちなみに、1番目はあと数年後であれば一応可能、2番目は超下策で論外。あとはシステム構築と平行してデータ入力のオペレーターの確保も必要というところですかね。‥‥悪いことは言わん、3年以上のプロジェクトにしておけ。でないとどこかの工程で無理が出て自殺者が出るよ、このシステム。

ていうか、3年以上にした方がいい理由はもう一つあります。ずばり「雇用対策」。金融統合のあおりを受けて、超大規模金融案件が同時進行しているのがここ数年の状況なのですが、システムカットオーバー後の開発体制の縮小によって、そろそろ余剰人員が発生しはじめるだろうと予想されています。でも、どこもかしこも同時期に開発をしているということは、同時にみな開発体制を縮小する。つまり、他のシステムに乗り換えられずに、食いっぱぐれて生活に困る技術者が発生するわけ。大半が派遣として働く彼らを年金照合システムに吸収すれば、少なくとも数年間は雇用対策として有効になるのではないかなぁ、と。

読書:パール・バック『大地』4巻(6日目、読了。ちょっと最後が記憶と違っていました)、『日経サイエンス』(発症したら致死率100%の狂犬病から生還した事例の医療レポートが面白かったです)